搬送速度を上げたら不良検出率が落ちた、微細な欠陥が画像に映らない、照明条件が変わると検出率が安定しない——。検査装置の見逃しに関する課題は、アルゴリズムや照明の改善だけでは解決できない場合があります。
実際には、カメラやレンズ、撮像条件などの撮像系が原因となり、検査精度が低下しているケースも少なくありません。画像処理アルゴリズムがどれだけ高精度でも、入力される画像の品質が不十分であれば、見逃しは構造的に発生します。
本記事では、検査精度に影響する代表的な5つのポイントとその改善方法について、撮像系の観点から整理します。
動体ブレは、カメラの露光中にワーク(検査対象物)が移動することで発生します。露光時間中にワークが1画素分以上移動すると、画像がにじみ、微細なキズや異物が背景に溶け込んで識別できなくなります。
搬送速度と露光時間の関係は以下の式で整理できます。
ブレ量 [μm] = 搬送速度 [mm/s] × 露光時間 [ms]
たとえば搬送速度1,000mm/sで露光時間が1msの場合、ブレ量は1,000μm(1mm)となります。画素サイズが数μmの産業用カメラでは、この移動量では欠陥の識別が困難になります。
対策の基本は露光時間の短縮です。短い露光でも十分な光量を確保するため、ストロボ照明やハイパワーLED照明を組み合わせる手法が有効です。加えて、高フレームレートのカメラは短時間露光での連続撮像に対応しやすく、高速搬送ラインで動体ブレの抑制に有効です。
グローバルシャッター方式のCMOSセンサーを選定することも重要です。ローリングシャッター方式では、画面上部と下部で露光タイミングがずれ、高速搬送時に歪みが発生します。
検査画像の解像度は、「検出したい欠陥のサイズ」と「視野(撮影範囲)」から逆算して決定する必要があります。一般的な目安として、欠陥サイズに対して2~3画素以上で表現できる分解能が求められます。
たとえば、100μmの欠陥を検出するには50μm以下の画素分解能が必要です。視野が100mm×100mmの場合、水平方向だけで2,000画素以上が必要になります。
画素数を増やしても、視野サイズが大きすぎれば1画素あたりの実寸分解能は上がりません。逆に、必要な視野に対して過剰な画素数を選ぶと、データ転送量やストレージ負荷が増大し、処理速度が低下する場合もあります。
視野サイズと画素数のバランスを最適化し、必要な分解能を確保することが重要です。AI判定を導入している場合、入力画像の分解能が不足すると、AIによる特徴抽出が困難になり、判定精度へ影響する場合があります。
検査ラインでは、ワークが一定速度で搬送されている間にカメラが撮像を行います。フレームレートが搬送速度に対して不足すると、撮像と撮像の間にワークが通過してしまい、画像の取りこぼしが発生します。
ワークピッチ(ワーク間隔)が短い場合や、ライン速度を増速した場合、カメラのフレームレートが追いつかず、飛び飛びの画像しか取得できない状態になります。タイミングずれが発生すると、トリガー信号との同期も崩れ、検査抜けの原因となります。
フレームレートの向上には、カメラ側のセンサー読み出し速度だけでなく、データ転送のインターフェースも関係します。GigE Vision(1Gbps)ではデータ帯域が不足する場合、CoaXPress(CXP-12で最大12.5Gbps)やCoaXPress-over-Fiberへの移行が有効です。
CoaXPressは同軸ケーブル1本でデータ転送・制御・電源供給(PoCXP)を同時に行える規格です。CXP-6時で約40m、CXP-3時で約100mの長距離伝送に対応します。CoaXPress-over-Fiber(CoF)では、光ファイバー経由でケーブル長の制限がほぼなくなり、QSFP28(100Gbps)を介して最大帯域5,000MB/sの画像転送が可能です。
シーアイエスでは低画素から4億画素、高速撮像、CoaXPress-over-Fiberまで幅広い製品ラインアップを提供しています。検査条件に応じて、解像度、速度、伝送距離を同時に見直せる点も撮像系を再設計する際の強みです。
ROI(Region of Interest)機能で必要な領域のみを読み出すことで、実効フレームレートを大幅に引き上げる方法もあります。シーアイエスのVCC-10CoF2Mは、ROI設定時に撮像領域を限定することで、最大約92,000fps(条件による)の高速撮像が可能です。
高画素カメラに解像力の低いレンズを組み合わせると、画面中央はシャープでも周辺部がボケる現象が起きます。カメラのセンサーサイズに対してレンズのイメージサークルが不足している場合、画面端の光量低下(けられ)も発生します。
寸法測定用途では、レンズの歪曲収差(ディストーション)が測定値のばらつきに直結します。たとえば、固定焦点レンズ(CCTVレンズ)は汎用性が高い一方、近接撮影時の歪みが大きくなる傾向があります。高精度な寸法測定が求められる場合は、テレセントリックレンズの検討が必要です。
レンズ選定では、以下の3点を順に確認します。
シーアイエスは、カスタムイメージングソリューションとして、カメラ選定だけでなくレンズや照明を含めた撮像系に関するご相談にも対応しています。
LED照明の経年劣化や外光の変動は、画像のコントラスト低下を招きます。照明の輝度や色温度が変わると、同一ワークでもフレームごとに見え方が異なり、検出閾値の安定性が損なわれます。
対策として、照明の定期的な輝度測定とHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影の活用が有効です。HDR対応カメラでは、異なる露光条件の画像を合成し、明暗差の大きいワークでも安定した画像を取得できます。
工場環境では、搬送装置や周囲の機械から振動が伝わり、カメラやレンズの位置がわずかにずれることがあります。この微振動が画像のブレや位置ずれとなり、寸法測定や位置合わせ精度に影響します。
電子ブレ補正(EIS)やセンサー内蔵のノイズ低減機能は、振動による画質劣化を軽減する手段となります。加えて、カメラの取り付け方法(防振マウントの使用、筐体の剛性確保)も重要な要素です。
検査装置の見逃し原因は、アルゴリズムや照明だけでなく、撮像系に起因している場合もあります。動体ブレ、解像度不足、フレームレート不足、レンズ選定ミス、画像品質の低下という5つの要因を総合的に見直すことで、検査精度の改善につながる可能性があります。
撮像系の改善は、画像処理の精度向上やAI判定の安定化にも直結します。カメラ・レンズ・インターフェース・撮像条件を一体として最適化する視点が求められます。
株式会社シーアイエスでは、検査内容や撮像環境に応じた最適な産業用カメラの選定をサポートしています。デモ機貸出、技術相談、お見積りにも対応しています。
見逃しの原因は、動体ブレ、解像度不足、フレームレート不足、レンズ選定ミス、画像品質の低下など、撮像系に起因するものが多くあります。アルゴリズムの精度以前に、入力画像の品質を確認することが重要です。
露光時間の短縮が基本的な対策です。シーアイエスのVCC-10CoF2Mのように最大1098fpsの高速撮像が可能なカメラを使用し、グローバルシャッター方式を選定することで、搬送速度の高いラインでもブレを抑制できます。
検出したい欠陥サイズの半分以下の画素分解能を確保する必要があります。視野サイズと欠陥サイズから必要画素数を逆算し、用途に適した画素数のカメラを選定します。シーアイエスではVGAから4億画素クラスまで対応しています。
データ帯域が不足している場合、CoaXPress(CXP-12で最大12.5Gbps)への移行が有効です。CoaXPressはJIIA(日本インダストリアルイメージング協会)が管理する国際規格です。さらに高速な転送が必要な場合は、CoaXPress-over-Fiberで最大帯域5,000MB/sの転送に対応できます。
画面端のボケ、光量低下(けられ)、歪曲収差による寸法測定値の不安定化が発生します。カメラのセンサーサイズとレンズのイメージサークル、焦点距離、解像力を事前に確認して選定する必要があります。